ヴァイオリンとヴァイオリン音楽



<第一楽章 ヴァイオリンの歴史>


(Mr。ビーハイブ楽師の話題メモ帳)

<「ヴァイオリンとヴァイオリン音楽」談義を始めるに当たって>

 私は、新世紀を迎えた平成13年に、残された人生に「ヴァイオリンおよびヴァイオリン演奏史」の 様なものをまとめたいと考えて資料を集めてきた。
 よくよく考えてみると、これは大変遠大な構想であり、一筋縄ではではいかないと思っている。 要するに残された人生でどこまで要約してまとめられるかである。しかし資料はかなり集まってきた ので、その中からよもやま談義の形で、すこしづつ書き貯めて行きたいと思う。
 その第1回として、集めている資料の中でおもしろいものを見つけたので紹介する。

(その1)「ヴァイオリン」と「フィドル」

 ヴァイオリン(以下、Vnと称す)の事は Violino 、つまり「小さなVa」即ち「ヴィオラ」と 言うことで、ドイツ語では Geige、フランス語では、Violon と言う。

 ヴィオール属の楽器は15世紀に出現しているが、Vn属の楽器は16〜17世紀に出現していて、 現在とほぼ同じものが生まれたと言われている。

 しかしここにもう一つ「フィドル」という楽器があり、これはVnと異名同音的なものでVnと全く同じ ものであるが、皆川達夫氏の「楽器」(マール社)では、12〜14世紀に祖形のフィドルというのが 紹介されている。


初期のフィドル

近代のフィドル

 このフィドルというのは、「Joh Ciconiaのモテット集」を演奏していた古楽演奏団体マーラ・プニカ (Mala Punica、指揮ペドロ・メメルスドルフ)で使われていたことは記憶に新しく、擦弦楽器で 完全五度調弦のVnと全く同じ楽器でありながら、演奏の面ではずいぶんと異なった道を歩んでいる。

 英和辞書で引くと、最初の第一義は即「Vn」となっているが、第二義として「くだらない事、つまら ないこと、詐欺、いかさま」という意味になる。動詞でも「いじくる」「もてあそぶ」などの意味に なっている。

 次に「Fiddler」で引くと、ズバリ「ペテン師」と説明されている。ちなみに著者の小さな辞書では ペテン師とはなっていない。英語の辞書で見る限り、Vnがヨーロッパのクラシック音楽の精華として 君臨してきた楽器とは、とても思えないことになる。

 一世を風靡した「屋根の上のVn弾き」の原題は(Fiddler on the Roof)であった。
 事ほど左様にその後の進路は、片やVnはパガニーニの絢爛たる技巧にみられる様に、音楽の いわば花形として君臨しているのに対して、他方フィドルは演奏法まで違う。クラシックVnの方は 顎をチンレストと左肩で支えるのに対して、フィードルは左手をファーストポジションに固定して 左の手のひらをネックの下につけネックを握るように支える人が多い。(Vnのレッスンでは最も おこなってはいけないとされていること)。そしてVnの尻を胸や二の腕に押し当てて支える人も 珍しくないとのことである。

 Bowを持つ手も、ほとんどの場合だらりと下がっており、1ノート/1ボウであるために、弾き始めると 弦からボウを離すことが無く、フレーズを改めて一旦弦からボウを離すなどという事はよほどのことが無い 限りやらないそうである。
 従ってボウイングは決まりがないから、例えば複数のフィードラーが演奏する場合は、ボウはバラバラで ある。このような状況を見るととても高級なテクニックを要する曲の演奏は不可能と考えられる。
 著者の印象では、フォークダンスの伴奏に使っているのが、フィドルの様な気がする。

 日本でも同じような事として、昔「のんき節」と言うのが流行った。これは筆者も聞いたことが あるが、Vnを弾き語りしながら世の中の出来事の風刺をする。筆者が師匠から聞いた話では、ある時、 流しの「のんき節」が来たのでちょっとVnを貸してみよ、と言って弾こうとしたら調弦が違うので、 調弦を五度調弦になおして弾いたら、どうしてそんないい音が出るのか、と感心して帰ったとのこと。 これもフィドル的なVnの使い方だったのかも知れない。
      (以上)


平成14年2月22日  ***編集責任・錦生如雪***


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