前にヴァイオリン(以下、Vn)とフィドルは同じものであり、演奏法の違いにより大きく進路が異なった、と
書いたが、Vnの楽器発展の歴史を調べてみると、フィドルこそVnの原点で
あり、Vnの歴史を語る上において、フィドルは避けて通れないれいものである。
そこで調べてみると、16世紀にはビオール属とVn属の楽器が生まれていて、
ヴィオール属の方がVn属より少し早く生まれている。そしてVn属ではアマティ
一族とそれの弟子であったストラディヴァリウスによって、ほぼ現在の形をした完成されたものができ
あがっている。
このヴィオール属の楽器とVn属の楽器は外観の形状よく似ているが、かなり大きな
違いがある。
その違いを列挙すると次の通りである。
[1].ヴィオールのネックの部分には、リュートの特徴であるフレットが着けられているのに
対して、Vnではフレットはない。
[2].ヴィオールの背面は平らであるが、Vnはふくらみを持っている。
[3].ヴィオールは楽器の厚みは厚いが、Vnは薄い。
[4].響孔と呼ばれる孔はヴィオールはC型であるのに対してVnはF型である。
[5].ヴィオールは6弦であるがVnは4弦である。
[6].ブリッジ(駒)の形はヴィオールはVnに比べて平らであり、余り湾曲して
いない。そのためにビオールでは一弾で、より多くの弦を弾くことが出来たのに対して、
Vnは2弦である。
と言った具合にかなりの違いがある。

ヴィオールは駒のカーブが緩やかな為に一度に多くの弦が弾ける一方、その為に隣接する弦と接触し
易く、不要な音が鳴ってしまう為、早いパッセージの曲などの演奏は難しく、華やかな演奏は出来
なかった。
またヴィオールの音は繊細で響きが弱いために、コンサートホール(ベートーベン以前はそんなに
大きいホールは無かったと思われるが)の様な広い場所での演奏には向かず、サロン風(室内楽)な
ものに適していた。
これに対してVnは響きが豊かであり、華やかな技巧を凝らした演奏が可能であったので、
もう1700年までにヴィオールはすたれ、ヴァイオリンにとって代わられると言う運命をたどっている。
はじめにVnを論ずるに当たってフィドルは避けて通れないと書いたが、ヴィオールも
同様のことが言える。
Vnはアマティ一族およびアントニオ・ストラディヴァリウスによって、突如として現在と
同じものが完成されたと言うことでは無く、フィドルと言う民族楽器が各地でいろいろ形のもので
存在し、16世紀頃にヴァイオリンと同形のものに集約されたものと思われる。
その歴史的なものを調べてみると、フィドル→レベック→リラ・ダ・ブラッチョ等を経て、
ヴィオール属、Vn属の楽器に変遷したものと思われる。

ただ不思議な事に、この時点(16世紀)でVnは現在のものと全く同じものが完璧に
作られており、それ以後の進展は全くないどころか、科学技術の進んだ今でも、450年前に出来た
ものを追い越すことすら出来ずに450年前を模倣し、何故こんないい音が出るのかを模索している
始末であり、Vnというのは本当に不可思議な楽器である。
演奏法にしても然りである。ブリッジのカーブがきついために隣接弦との接触が無く、完全5度
調弦であると言ったこともあり、歴史的に見てヴィヴァルディ.コレルリ.アルビノーニ.
タルティーニらのバロックの名手によって開花したが、ロマン派の時代になると、パガニーニや
サラサーテなど、超絶技巧の持ち主によって音楽の花形の役割を担っている。
この不可思議な楽器であるヴァイオリンとその演奏などについて迫っていきたいと考えている。 フィドル他の楽器は、既に前報にて図に示している。
(以 上)