ヴァイオリンとヴァイオリン音楽



第一楽章 ヴァイオリンの歴史


(Mr。ビーハイブ楽師の話題メモ帳)

(その3)ヴァイオリンの誕生

 前項でヴァイオリン(以下、Vn)は16世紀頃に突如として現在の様な形のものが完成したものではなく、 各地にフィドルがあり、それらが原形となって、レベックからリラ・ダ・ブラッチョを経て ヴィオール属の楽器やVn属の楽器に変遷したものであると述べた。

 さて、そうすればVnはいつ頃誕生したものであろうか!
 文献等ではほぼ16世紀中葉に誕生したものと言われているが、定説は無いようである。
 また初めて作った人も曖昧であり、ガスパール・ティーフェンブルッカー(1514?〜1570)、 ガスパロ・ダ・サロ(1542〜1609)、そしてアンドレア・アマティ(1514?〜1577?)の誰かで あろうといわれている。

(1)ガスパール・ティーフェンブルッカー
  ドイツ南部のバイエルンで生まれたが、リュート職人の多いフュッセンと言う町であったので、 当然の事ながら楽器作りに携わったが、一説によるとティーフェンブルッカーはリュート以外に Vnも作ったと言われているが、はっきりとティーフェンブルッカーの作と確認されるものは 見られないと言うことである。

(2)アンドレア・アマティ
  Vn作りで有名なアマティ一族の始祖である。北イタリアのクレモナと言う小さな田舎町で Vnの製作を始める。彼の最も古い銘器は1551年に作られたものが確認されているが、生没年が やや曖昧な点があるので、1551年までにも作品はあるのではないかと思われるが、不明である。
  このアンドレアにはアントニオ・アマティとヒエロニムス・アマティの2人の息子がいるが、 アントニオの方が評価が高く、アーチ、アウトライン等、アンドレア・アマティを凌ぐ完成度が あると言われている。
  ニコロ・アマティはヒエロニムスの息子であるが、美しいパーフリング、F孔、スクロール等 ともに非常に完成度の高いものを作っていると言うことである。
  かの有名なストラディヴァリはこのニコロ・アマティの弟子である。

(3)ガスパロ・ダ・サロ
  北イタリアのプレシアの近くにあるサロと呼ばれる町で生まれた。従ってこの時代の特徴でも あったように、これは本名ではなく「サロ」のガスパロと言う意味である。
    サロは最初はヴィオールを作っていたが,いつの頃からかヴァイオリンやヴィオラを作るように なったと言う事である。

 以上の様にいわば2名と一族が初期のVn作りに関わっていたとされるが、誰が現在の形の Vnを最初に完成したのかは、実のところ判っていない様である。

   ただこれほど偉大なVn製作者と言われたアマティ一族の楽器は現在では全く使われて いない。その理由としてはつぎの様な事によるものである。

 アマティ・ストラディヴァリの時代に作られたVnはいわゆるバロックVnと呼ばれており、 弦の張力が弱く、大きな音が出なかった。従って宮廷のサロンの様な場所とか教会で演奏する 場合には問題は無かったが、モーツアルトの後半やベートーベンの時代になると、所謂市民社会が 成熟してくるにつれて、音楽家は教会や宮廷だけではなく、一般市民の前で音楽を演奏する事が 多くなって来た。
 そうすると多くの人に集まってもらわなけば採算がとれないので、大きな演奏会場が作られ、大勢の 人の前で演奏する機会が増えてきた。そうなるとVnの音量が不足して、絢爛なVnの演奏が 不可能になって来た。

 そこで18世紀頃に何とかしなければいけないと言う事で、色々考えられたが、弦の張力を増すと、 ヴォリュームは増大するが、音が高くなってしまう。 試行錯誤の末、弦の長さを長くして、張力を 上げれば、従来のままで、ヴォリュームが増大する事が判った。  そこでストラディヴァリの楽器も含めて、殆どすべての楽器のネックを切って長く、指板も長く 改造された。この様にして、大勢の観客の前でしかもオーケストラとの協奏曲でもVn独特の 華麗で絢爛豪華な演奏が可能になったわけである。

   ところがアマティのVnは表板の曲線が大きかったのでこの改造が出来ず、バロックVnのままで あった為に、現在では全く使用されないままになってしまった、・・・と言う事である。

 この改造はVnの誕生以後ただ一度の改造であり、ヴァイオリンが初期の頃に、もう理想に 近い楽器が完成されていたという事になるのではなかろうか。
 しかし現在また古楽が見直される時代になってきており、バロックVn(オリジナル 楽器、あるいはピリオド楽器とも言われる)の柔らかで落ち着いた響きが一部で見直されているのも 事実である。

 次に改造前と改造後の状況、及びバロックVnの図を挿入する。

                         (以  上)

平成14年4月4日  ***編集責任・錦生如雪***


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