
選曲コーナー(参考情報欄)
女流バイオリニストの歴史に思うこと
(錦生如雪楽徒)
<女流バイオリニストの歴史に思うこと>
以上、明治11年生まれの安藤幸さんから、平成生まれの中学生バイオリニストまでの経歴をざっと
通覧してみて、戦前の音楽世界で育った天才バイオリニスト達と溢れるばかりの西欧音楽世界で
成長してきた戦後のバイオリニスト達では、少しく日本の音楽事情も変わりつつあるのでは、と思わせ
ます。
諏訪・巖本・辻諸氏の時代では、意識して自ら西洋音楽の世界に飛び込むか、或いは、強制的に
演奏技法の習得に努めないと、なかなか音楽環境や音楽教育は世界に通用するレベルまで達成出来
なかったと思います。
その点、戦後、特に五嶋・諏訪内さんの時期での音楽世界は、西欧音楽は身の回りに溢れており、
音楽生活環境も戦前とは格段に違った良好な条件が整っており、常によい刺激がえられるものに
なっていました。
従って、生まれながらに西洋音楽が身に付いていたのでは、と思っても不思議でないほど、彼女らの
音楽面での成長に異文化の取り込みに格闘していると云ったような前世紀的異質感がありません。
昭和一桁生まれの優れた洋楽演奏家達でさえ、意識的に異文化と格闘してきたと感じていた人もいた
ようですから、戦後の世代の場合は、その苦労が無くなったと言っても良いかも知れません。
一体に、異文化を吸収消化するのに、各民族は、どれほどの時間を要していたのでしょうか。
日本の洋楽の場合、女流バイオリニストの歴史に見たように、約百年以上を要しています。
それも、約50年から60年ほど経った段階で、「戦争」という荒治療で、いったん国の文化を
バラバラにした時期を通り越していますから、文化吸収速度が早まった可能性があります。
五嶋・諏訪内両氏の場合が、何百年に一人の天才という大袈裟なものでないとすれば、日本人の
洋楽に対する世界もだんだん開けてきたと見るべきでしょう。
一人の優れた女流バイオリニストに刺激されて、後に続く若者がどんどん出てきて、結果的に
バイオリン音楽世界レベルを引き上げ、世界に通用するものになっていくのでしょうか。
21世紀の日本の音楽世界はどんな展開を見せるのでしょうか。バイオリンの音楽世界の発展が
日本の洋楽世界全体を引き上げることになれば、音楽を愛好するものにとっては有り難いことです。
平成14年2月20日 ***編集責任・錦生如雪***
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